経理のQ&A

創業したての会社です。まず何をしたらよいのでしょうか?

ご質問の件ですが、法人設立と言うことですので、まず、届出関係について、ご確認下さい。

  1. 法人設立届→税務署・都道府県税事務所・市区町村役所
  2. 青色申告承認申請→税務署(設立後3月以内又は、1期目の決算日まで。)
  3. 源泉所得税の納期の特例→税務署

最低これだけ出していれば、ちょっと安心です。

会計・税務処理に関して

現金の管理をしっかりとやりましょう

会社で小口現金を使用する場合には、現金出納帳をしっかりつけましょう。現金以外は、何らかの書類で確認できる場合が多いですが、現金だけは、つけ忘れると後で思い出せなくなり大変です。

領収書等の管理

領収書等は、スクラップブックに発生順に貼りつけて保管しましょう。簡単な方法ですが、いろいろ効果は大きいです。

上記の2つは、毎日行った方がよいでしょう。

給与の支払いに関して

給与・報酬の支払い時には、決められた「源泉所得税」を控除する必要があります

控除していない場合、会社が負担することを求められることがありますので、忘れずに控除してください。控除した「源泉所得税」は、その支払いの翌月10日までに、納付することになっています。(上述の届出書の3番を提出していると7月と1月の2回にまとめて納付することが出来ます。

いろいろありますが、最低限、以上のことから始められると良いと思います。

会社を設立し税務署への届出書類を作成しています。その中の「給与支払事務所等の開設届出書」 の内容にある「税額の有無」がよく判りません。 現在社員2名で一人は扶養家族なし。一人は扶養家族が2人いる状態です。 記入のポイントなどアドバイスをお願いしたします。

給与の源泉徴収事務の流れから説明します。

  1. 給与の支払い等をする者は、「源泉徴収」をしなければならない。(源泉徴収義務者)
  2. 源泉徴収義務者の納税地(税金を納める場所)の確定のために「給与支払事務所等の開設届」を提出する。
  3. 給与の源泉徴収する金額は、「給与所得者の扶養控除等申告書」によって、扶養親族等の内容を確認し、「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて算出する。(用紙は、国税庁ホームページからダウンロードできます。)
  4. 徴収した税額は、原則として翌月10日までに金融機関等で納める。
  5. 給与の支給人員が常時10人未満であれば、「源泉所得税の納期の特例」を提出すると、毎月の納付が、半年に一度でよい。(源泉所得税の納期の特例)

会社からの給与が「主たる給与」の方は、3の「給与所得者の扶養控除等申告書」を最初の給与をもらう日までに会社に提出します。これを提出した方は、税額表の「甲」欄適用者になり、源泉徴収税額表の「甲」と書いているところで、扶養家族の人数と該当する給与の金額により、徴収する税額を求めます。(上記、税額表をダウンロードし、税額を求めてみてください。)

ご質問の「税額の有無」は、全員について徴収する税額がない場合には「無」に印を付け、それ以外の場合には「有」に印を付けることになります。この「給与支払事務所等の開設届」の提出は、税務署に「この会社で給与の支払が発生するのだったら、税金を納付するために納付書を送らないといけないな」と思ってもらう程度にとらえていいと思います。

また、源泉徴収は、預かっている税金を納めるということですので、期日に遅れると罰金が高いです。ご注意ください。

WEBでの物品の販売を行う事業を開始する予定です。その際の、税務署への届出書類、法的手続き、またそのタイミングを教えてください。個人で始めたいと考えています。

個人で始められるということですので、まずは、確定申告の必要が出てくるという前提でお答えしますね。(確定申告は、その年中の所得(利益のことです)が20万円以上あれば申告する必要があります)

必要な届出書類は下記の通りです。

  1. 開業届出書
    ………事業を開始した日から1ヶ月以内
  2. 青色申告の届出書
    ……その年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合は事業を開始した日から2ヶ月以内)

その他にも、お給料を払うようになったり、状況が変わればその都度必要な届出書が出てきますが、まずは、上記の2つを税務署に提出してください。

2の「青色申告」は、必ず提出する書類ではありませんが、提出していると青色の「特典」があります。

主なものは、

  1. もしも損失が出た場合、3年間の繰越をすることができます。
  2. 10万円又は65万円の特別控除(利益から控除できます)があります。
  3. 同居の家族の方が仕事を手伝った場合、一定の要件に合えば、お給料を経費として支払うことができます。

その他いろいろありますが、提出されていて、損はないと思います。

提出する書類は、国税庁のHPで、ダウンロードすることができます。

先日、税務署に開業届(個人事業)、青色申告承認申請、専従者給与の届出を提出したのですが、開業日以前にいくつか備品を揃えた分は、開業日前ですが経費として算入できますか?

開業前に使った経費も、もちろん「経費」として処理することができます。原則的に開業の準備期間にかかった、交通費・家賃・その他の経費は「開業費」という「繰延資産」となります。「開業費」は任意に償却できますので、その年に一度に全額「経費」にすることもできます。

しかし、1個または1組の取得にかかった費用が10万円以上になると、原則として「減価償却資産」となり、減価償却の対象となりその年には一度に全額「経費」とすることができません。定められた期間で少しずつ「経費」とすることになります。(10万円以上20万円未満の場合、一括償却といって3年償却を選択することもできます。)

ただし、中小企業については、法律的には期限付きながら、取得した30万円未満の少額減価償却資産は、事業年度に全額損金算入(即時償却)できる特例制度があります。(※令和1年8月現在)

株式会社での開業を準備しております。これまでも、準備のために100万円ほど費用がかかっていますが、これを開業後に法人より個人に支払う場合の注意と、税務上法人の費用として認められる範囲および処理についてお教えください。また、既に起業用の仮事務所は持っており、その費用(駐車場代含む)、事務機器(PC、FAX、机など)、顧客予定者と打ち合わせのための出張旅費(海外国内含む)、その場合の会食費、共同設立者との会議費、事務用品費など、開業後と同等の費用が発生しており、個人名での領収書はもらっています。

まず、会社を設立するために支出した費用(これを「創立費」といいます。)の内容ですが、法人税法上は、「発起人に支払う報酬、設立当期のための登録免許税等法人の設立のために支出する費用で、その法人が負担すべきもの」と規定されています。

具体的には、以下のようなものが含まれます。

  • 発起人報酬
  • 設立登記の登録免許税
  • 諸規則の作成費用
  • 株式募集等のための広告費用
  • 創立事務所の賃貸料
  • 設立事務の使用人の給与手当等
  • 金融機関の取扱手数料

使われた経費が、上記のような法人設立のために使われたものであるなら、「創立費」に該当することになります。この場合、領収書等の宛名は、法人の設立前ですので、個人名でもOKだと思いますが、裏面にメモをしておくなど、内容を忘れないよう記録しておいた方がよいです。

また、繰延資産(創立費、開業費その他)には、資産の取得に要した金額は含まれません。事務機器・机等で10万円以上のものは、固定資産になりますので、創立費には含めず、減価償却の対象としてください。(中小企業については、取得した30万円未満の少額減価償却資産は、事業年度に全額損金算入(即時償却)できる特例制度があります。(※令和1年8月現在)

次に、その費用について個人が立て替えた場合に関してですが、その法人の設立のための費用であれば個人が立て替えたものであっても法人の創立費に該当することになります。会社にとっては、個人に支払うべき債務があるわけですから、時期をみて支払いされれば良いかと思います。

会社を設立したのですが、事業に必要な備品の購入や自動車のガソリン代などを支払う際に、個人のカードで支払ってはダメでしょうか? 現金や法人カードなどでないといけないのでしょうか? また、領収書は必ず別途書いて貰う必要があるのでしょうか? 社名が書いてないとダメなのでしょうか? レシートなどではダメなのでしょうか?

会社設立後の支払いですが、会社に必要な費用は、会社が支払うのが原則ですが、もちろん、個人で支払うときもあるでしょう。この場合は、個人が立替えて支払ったことになるので、その立替てもらった費用を後日、会社が個人に支払うと言うことでOKです。

要は、その支払が会社の運営に必要な費用であるか否かと言うことですね。もちろん会社運営がある程度進んできたら、法人カード等を作って、法人が直接支払った方が簡単で、誤解・間違いがありません。

領収書等の取扱いですが、別途領収書(もちろん宛名が書いてある)を書いてもらうことが原則です。ただ、小売業・飲食業のように不特定多数を相手にする業種の場合、通常レシートの発行が領収書の代わりとしていることが多いので、その場合レシートだけでもOKです。

まとめますと、法人は、その目的に応じた活動を通して利益を上げていく組織ですので、その活動に通常必要とする費用は、原則的にすべて法人の損金(経費)になります。領収書等は、それらを証明する書類ですので、「このお金は、会社に必要な経費です」という事がわかるように保管しておいてください。

会社設立のために、本店所在地として賃貸不動産を契約する予定です。その際、契約書に書く会社名は、定款や登記終了後でないと正式にはその名前が認められないかと思います。個人契約で結んだ後、法人契約に変えた方がいいのか、その場合、最初個人契約で結んでも、契約金は、会社の必要経費として税務上は問題ないのでしょうか?

個人契約で結んだ後、法人契約に変えるのが一般的です。そもそも会社の謄本が、まだありませんものね。最終的に法人契約になっていれば、税務的にはなんの問題もありません。

開業届を4月1日付けで、提出したのですが、オープンは4月6日になりました。この期間に購入した備品や消耗品などは、「開業費」ではなく、普通の「経費」として処理してもいいのでしょうか? また、開業前に借入金が口座に入金されているのですが、伝票日付は4月1日にするのでしょうか? 開業前に発生したお金の処理はすべて4月1日伝票で処理するのでしょうか?

購入した備品や消耗品などは、「開業費」ではなく、「経費」として処理しても問題ないと思います。

「開業費」は、事業開始前までにかかった経費を毎月の経費(毎月の固定費)と区分することによって、経営の状態をわかりやすく表示する意味があります。ですから、毎月の経常的な経費と区分した方が経営の成績を適正に表示することができるようでしたら、「開業費」にした方が良いですね。結論としましては、その経費が「開業準備のための特別な経費」か「毎月経常的に発生する経費か」というところで判断されてはいかがでしょうか。

また、借入金の伝票日付も4月1日で良いと思います。

開業は、お店のオープンの前から準備が始まっていますから、オープンの日に合わせる必要はありません。きりの良いところで、4月1日に全てのスタートを合わせて頂いたらいいと思います。

近々、レストランを開業予定です。開業にかかった経費は開業費として5年間で償却するそうですが、店舗取得の保証金についてはどうなのでしょうか? 厨房機器は個別に減価償却する資産になるのでしょうか? 内装工事代金は一式で開業費にしてもいいのでしょうか?

店舗の保証金は、将来に返還される部分と返還されない部分があると思いますが、返還される部分は、その時まで「保証金」として資産においておきます。返還されない部分は、「権利金等」の科目で、5年間で均等に償却していきます。

厨房機器は、おっしゃるように個別に減価償却の対象になります。 1個又は、1組で判定していきまして、それぞれ10万円以上の金額となると減価償却の対象となります。ただし、10万円以上20万円未満の金額の場合、3年間で3分の1ずつ償却する「一括償却」を選択することも出来ます。

また、その他の物件を探すのに係った交通費、メニューを決めるのに使った食材費等々、お店をオープンするまでに使った「費用」は、「開業費」として資産に上げておき5年間にわたって償却していきます。(1年で一度に経費にしてもよい。これを任意償却といいます。)

常日頃から近くのX銀行の支店を利用していますが、その支店での出資払い込みや当座預金の口座開設は簡単に出来るでしょうか? また他行との付き合いは皆無な状態ですが、そのような取引をしてもらえるところはありますか?

ご質問の件ですが、出資の払い込み(出資金払込み事務取扱委託)の方は、形式的な審査があると思いますが、実態として法人の設立準備をしているのでしたら、そんなに心配することは有りません。もし仮にX銀行が受けてくれないとしても、他のどの銀行でも出来ると思います。

銀行は、実態のない法人・公序良俗に反するような法人の設立に注意するように指導を受けていますので、それ以外でしたら、原則として断る理由はないと思います。注意点としては、銀行またその支店によって、取扱に係る日程に差がありますので、早めに銀行と話をして日程に余裕を持つようにされた方がいいですね。

当座取引の方ですが、これは、「事業主個人」と「銀行」の信用状態に大きく依存します。個人取引でも、実績があるのでしたら、そんなに難しいことではないと思いますが、法人から新規で口座開設ということになれば、信用実績を積むまでしばらく時間がかかるかもしれません。銀行としては、小切手に銀行の「信用」を供与することとなりますので、慎重に検討することになるでしょう。法人が設立出来たら、早めに要望を伝えておいてはいかがでしょうか。

ある書籍に、出資1口の金額が5万円のものを6万円で60口発行すると、資本金300万円、資本準備金60万円とすることができる、とありました。出資1口5万円のものに対して6万円で発行するとはどういうことなのですか? また資本準備金とは何ですか? また、その資本準備金はどのような時に活用できるのですか。

まず、株式に関してですが、現在は「額面」というものはなく。すべての株式は「無額面株式」ということになっています。法人を設立されるのでしたら、決めなければならないことは、「資本金の金額をいくらにするか」と「何株、発行するか」と「1株の発行価格をいくらにするか」いうことになります。

例えば、1株を6万円(1株につき6万円を払い込んでもらう)で200株を発行しますと、1,200万円の払い込みがありますよね。そのうち、いくらを「資本金」にするかを決めます。そして払い込んだ金額のうち「資本金」とならなかった部分を「資本準備金」といいます。この例では、1,000万円を「資本金」にしますと、差額の200万円が「資本準備金」となります。これを仕訳にしますと、次のようになります。

(借方) (貸方)
預金 1,200万円 資本金 1,000万円
資本準備金 200万円

払い込まれた全額を資本金として計上せずに、一部を資本準備金として積み立てておくことによって、会社の業績が悪化した場合にこれを取り崩すことで会社財産を維持することが可能となるのです。

資本準備金の性格は、基本的に「株主」の方からの払込ですので、「資本金」と同様です。ただ、「資本金」として拘束していませんので、「登記」はしませんが、税務上の取扱いは、「資本金」と同様に扱われます。乱暴ないい方をすれば、「制限の多少緩い、資本金」と考えてもらえばよいかと思います。

事業プランは、ある程度作り上げ、開業資金の準備を考えております。総投下資本は、1,500万円程度で計画しております。資金集めの方法として、一部を親に支援してもらおうかと考えております。両親からの資金借入が法的に出来るのでしょうか? また、両親から分割して資金を受けることはできますでしょうか?

両親からの資金借入が法的に可能かということですが、もちろん可能です。ご心配されているのは、「贈与」に該当しないか?ということだと思いますが、親子関係という特別な関係がありますので、「贈与」と認定されないように注意する必要はありますね。ポイントは、他の者とすると同じように「約束」して「実行」することだと思います。

  • 契約書の形で書面に残しておく
  • 約束した内容できちんと返済を実行する

ということだと思います。「ある時払いの催促なし」はまずいですね。

次に、「両親から分割して資金を受ける」ということですが。これは、お金をもらう(贈与してもらう)ということでしたら、注意して頂きたい点があります。「贈与税の非課税枠」と「連年贈与の認定」です。「贈与税の非課税枠」は、一般の場合年間110万円です。この金額まででしたら、贈与税はかかりません。また、一定の条件を満たしていれば「相続時精算課税制度」という制度を使うことも考えられるでしょう。この制度を適用すれば60歳以上のご両親から2,500万円までの贈与を受けた場合にも贈与税はかかりません。(ただし、これは非課税制度ではないので、後に相続が起こったときに精算され、相続税の課税対象となることがあります。)

もう一つの「連年贈与」ですが、毎年計画的に一定の資金を贈与すると約束すると、その贈与は、約束したときに一度に贈与されたものと認定されることがあります。ケースとしては、まれですが、たとえば、「毎年100万円を10年間、合計1,000万円を贈与します」という約束は、「連年贈与」と認定される可能性が非常に高いと思います。

また、分割返済の予定で資金を借り入れるという意味でしたら、最初にお答えしましたように、「借りたものは返す」ということであれば問題はありません。

ちなみに、資金の「借入」の代わりに法人組織にして「出資」してもらうということでしたら、「出資」自体に税金はかかりませんし、原則的に返済の必要もありません。 利益が出れば、「配当」が可能となりますし、将来の相続対策としても、有効な手段として活用できる可能性があります

会社設立にあたり、賃貸マンションを借りて、事務所兼自宅にしようと考えています。このような場合に電気代などの光熱費、電話などの費用などの経費への振り分けが難しいと思われますが、なんらかの指針などありますでしょうか? また現在、自己所有のマイカーを仕事で使った場合に車の税金や保険、駐車場代、燃料費などについても、どのように分ければ良いのでしょうか?

ご質問の件ですが、確かに明確な基準を設けにくいところです。原則としては、税務の基準は、その事業にかかる必要経費を一般に公正妥当と認められる会計処理の方法に従って処理をすればよいことになっていますので、合理的で、納得性が高く、客観的な基準を決めて区分処理をして下さい、ということになります。

実務でよく使う指針は、「面積」「時間」「利用頻度」などで、その状況に応じて決めています。例えば、個人事業で自宅を事務所として利用している場合、主に仕事に使っている部屋の面積に応じて経費部分を出したり、光熱費関係は利用時間を基準にしたり、電話料金はその使用頻度によったりしています。

今回は、法人の事務所としての利用を前提にされているとの事ですので、法人で賃貸契約をして「家賃」はすべて法人の「経費」とし、その上で、個人が利用する部分については「社宅賃料」として個人から徴収するという方法も考えられます。(この「社宅賃料」は法人からみれば収入となります。)

この徴収する社宅賃料の設定については、社宅の規模等により税務上の制限があります。極端に徴収する金額が少ない場合(ほとんどが法人負担となってしまう場合)には、個人に対する現物給与として源泉所得税の課税対象となることがあるので注意が必要です。ひとつの目安として支払い家賃の50%以上となっていれば(つまり、半分以上は個人が負担する設定であれば)、給与課税されることはないかと思います(所基通36-40、36-43)。光熱費・通信費に関しては、使用状況に応じて決めます。

自動車に関しては、業務に利用することを前提に法人に売却します。法人所有の法人利用ですので原則的に100%法人の経費とします。

ちょっと大胆に、経費算入の考え方の一例を書きましたが、実際は本当にケースバイケースです。

現在事業を父親と一緒にやっているのですが、そろそろ代を代わろうかと考えています。その時に今後事業を拡大するという意味と、年間売上が一億を越えているという事で、株式会社の設立を考えていますが、法人化するにあたってどのような問題があるのでしょうか? 現在は父親の自宅の一階部分を店舗として使っています。

法人として引き継ぐということは、お父さんの個人事業を廃業して、法人組織を新たに設立することになります。検討しなければならないことは、資産・負債の引継です。その際、個人に譲渡所得が発生しないように注意しなければなりません。

例えば、商品在庫を引き継ぐということは、適正な価額(通常販売価額の70%以上)でお父さん個人から法人に販売したことになりますので、その分、個人の最終年度で所得が増えます。また、貸倒引当金を設定している場合には、最終年度は設定しないことになりますので、その分、所得が増えることになります。 忘れやすいのが「個人事業税」です。通常は翌事業年度の経費となるものですが、廃業すると翌事業年度がないため、その最終事業年度の個人所得の経費に入れておく必要があります。

また、店舗に関してですが、個人の自宅の一部を今後「法人」で使用することになるのでしたら、個人と法人の間で「賃貸借契約」をすることになります。この所得は、個人の「不動産所得」となりますので、お父さんの「給与・報酬」を決定する際、考慮する必要があると思います。

その他にもいろいろとあるかもしれませんが、文面から推測できる部分についてお答えしました。

障碍者Aさんと二人で会社を設立する計画です。当初の主な事業は、Aさんの手記や詩集の出版と講演会の開催、企業からの広告などの予定です。収益が出てくれば、後にNPO法人を設立して出版事業などの収益の一部をそちらに寄付して、資金を貯めて、障碍者向けのグループホームを建設したいと考えています。その際の寄付という形は、経費とは認められないのでしょうか。なにか、良い方法がありましたらアドバイスをよろしくお願いいたします。

まず、現在の寄付金に関する税制について簡単にご説明しておきます。寄付金の種類は、次の4つに分類されてそれぞれ取扱が定められています。

  1. 国等に対する寄付金は全額損金(経費)になります。
  2. 公益法人等に対する寄付金で、公益のための一定の要件を満たすものとして財務大臣が指定した寄付金(指定寄付金といいます。)は、原則として全額損金となります。
  3. 特定公益増進法人に対する寄付金は、その支出額と一般の寄付金の損金算入限度額とのいずれか低い金額までが一般の寄付金とは別枠で損金になります。
  4. 一般の寄付金は、その支出額の合計額と損金算入限度額(資本金の大きさと所得の大きさによって計算します。)のいずれか低い金額までが損金になります。

ご質問のNPO法人は、現在のところ「人格のない社団等」の扱いになっており、「公益法人等」の扱いにはなっていません。ですから、適用される寄付金の税制は、上記の3番または4番になります。具体的な損金(経費)となる金額は、次の算式の金額までとなります。

(算式) 資本金等の0.25%と利益の2.5%との平均額

例えば、資本金が500万円で、当期の利益が100万円だとしますと、(500万円×0.25%+100万円×2.5%)÷2=37,500円ということになります。

とても少ない限度額ですので、1つの法人の寄付金だけですと、グループホームが出来るのは、いつのことかわからないことになってしまいます。(もちろん、これは税務上経費にできる限度額なので、経費にならなくてもよいのであれば寄付はいくらしても問題ありません。)

介護保険の指定事業者には、ご存じのように民間の法人もなれます。そこで、グループホームの運営を「新たに設立する予定の法人」でする事は、検討できないでしょうか? 一般の法人でも、法律の範囲内で節税して、ある程度の資金を将来の目的のためにプールすることは出来ると思いますので、グループホームを運営するという目的は早く達成できると思います。

現在、親の営む飲食業の従業員として勤務しているのですが、この度事業を引き継ぐことになりました。その際、法人成りをして、親にお店の場所や備品を借りるようにして賃料を支払おうと思っています。この場合、営業権についての譲渡となるのでしょうか? その際、税金や諸手続きはどうなるのでしょうか?

ご質問の内容がちょっとデリケートな部分もありますので、前提となる条件を限定してお答えします。

現在の想定される状況

  1. 事業主はお父さんで、個人で確定申告をしている。従業員としてお父さんから給与をもらっている。
  2. お店(店舗)、設備は、お父さんの所有である。
  3. 店舗(設備)に関して、お父さんから借りる契約をして、新たに設立する法人と賃貸契約を結ぶ。
  4. 棚卸資産の譲受代金の他には、営業権として特別に対価(お金)を支払う予定はない。

上記のような状況であれば、営業権(のれん)に対しての課税関係は発生しません。営業権については、原則的に有償によって取得した場合に資産として認識されます。これは、簡単にいえば、営業権の性格として必ずしも客観的なものではないということだと思います。 もし営業権に関して何らかの対価を支払うようであれば、以下について慎重に検討する必要があると思います。

  • 営業権としての価値が本当にあるか。
    営業権は、他の同業企業の正常的な利益よりも大きな利益を確実に予想されるようなその企業の持つ有用性・特権(その企業の特別な強み)と理解されています。
  • その営業権の評価額が適正であるか。
    この評価にはいろいろな方法があり、ここでのご説明は割愛させていただきます。

上記の2つの条件がそろいますと、たとえ「営業権」の譲渡があっても、税務上問題になることはないと考えます。この場合の、お父さんの所得は、基本的には「譲渡所得」になります。(特殊な条件の場合には、「雑所得」になる場合もあります。)

想定した条件が異なっている場合やその他の状況によっては、贈与・受贈益の認定課税等が考えられますが、単純な状況を想定してお答えしました。

創立時の貸借対照表の書き方がわかりません。会社の設立以前から少しずつ経費を使っており、その領収書もあるものとないものがあります。在庫商品はどのように貸借対照表にのせればいいのでしょうか? そして、仕事で使うパソコン等の扱いはどうなるのでしょうか? 自宅を会社事務所にしているのですが、これも固定資産となるのでしょうか?

まず、創立時の貸借対照表の書き方ですが、難しく考える必要はありません。会社が出来たばかりの「貸借対照表」ですので、「資本金」とそれに見合う「資産」(一般的には預金だと思いますが。)だけで、バランスさせます。

下記のような仕訳になります。

(借方) (貸方)
預金 ××× 資本金 ×××

これで、開始貸借対照表を作成して、税務署に届けて下さい。

次に「商品」「パソコン」「マンション」等の取扱ですが、これらを会社の「資産」にするには、個人から会社が買い取る形にします。

会社の仕訳は、次のようになります。

(借方) (貸方)
仕入 ××× 未払金 ×××(期末に棚卸の仕訳をします)
器具備品 ××× 未払金 ×××

事務所となる自宅も、会社の資産にするには同様に会社が買うことになるのですが、個人にしてみれば譲渡になりますので、税金等に注意が必要となります。そのため自宅で会社を設立した場合、一般的には自宅の一部を会社に賃貸する形が多いです。会社が払った「賃貸料」は、会社の経費になります。一方、個人にとっては、不動産所得の収入になりますので、個人の確定申告が必要になります。

どちらの場合にしても、水道・電気・固定資産税等のうち会社が使用した分を会社の経費にすることが出来ます。